2016年03月28日

古い自転車のレストア整備

2016年3月26日

今年初頭、Luigi’s Freedom Rideという自転車がテーマの小説を読んでうれしくなり、高校生のときから乗っている古い自転車をレストアすることにした。そのことは、この間書いたが、いっときは、もうこんな古い自転車なんか直すのよそうと思った。でも、この小説の主人公の自転車に対する愛情に感動してモチベーションがぐんと上がり、「古いものは大事にしよう!」と思い直した。

古い自転車2.jpg
きれいになった古い自転車

それから一ヶ月以上、暇さえあれば自転車の整備。一番苦労したのは、錆び落としかもしれない。錆を落とすには、コンパウンドと呼ばれる研磨剤が最も強力である。これを付けたスチールウールでこする。これに勝るものは無い。レモン汁や酢につける、コカコーラに浸けるとかの方法もある(コカコーラは、もう一生飲まないことに決めた)。だが、それでも落ちない錆もある。そういうのは、もうトタン屋根の補修に使う銀色の塗料を塗ってしまった。 コロンブスの卵である。そうすると、一寸見ただけでは新品に見えてしまうくらいきれいになった。(やや誇張気味。)

錆びた部品.jpg
塗ってしまった部品

そんなあるとき、友人のアラン宅に行った。お茶を飲みながら、「40年前の自転車をレストアしているんだよ。錆落としに苦労してね」と僕は言った。

するとアランが、「錆を落とそうと思ううちは、まだ正常。錆たままが良いと思うようになったら、ちょっと異常」と言う。アランは、筋金入りの骨董マニアである。そして、「俺の自転車を見せてやるよ」と、僕を車庫に連れていった。

そこにあったのは、錆だらけの水色の自転車。「これは、パトリシア(アランの奥さん)の誕生プレゼントに買ったんだ。錆びさびだろ。そこがいいんだよ。でも、こういうのが良くなると、かなり気違いだぜ。」

水色の自転車は1930年代のものだそうで、イギリス製のラーレイだか何だか分からないが、鉄製の重たいやつだ。(こんな鉄アレイみたいなもの、よく乗るよ。)
「見てごらん、このライト! アセチレン灯だよ。もちろん点かないけど、かっこいいだろ!」と、アランはうれしそうに言う。

アランは、水道とガスの配管屋で、年齢は60台半ば。若い頃はどもりがひどかったが、オーストラリア南極観測基地のガス水道管理の仕事に志願して、計二年を極地ですごして帰ったら、どもりがすっかり直ったそうだ。 今は温厚な初老の紳士。骨董マニアだが、一番好きなのはクラシックカー。愛車は1964年型ジャガーEタイプで、我が子以上にこれを愛でている。休みとなると、これで奥さんとあちこちドライブ。加えてキャンプ用にと、1970年代のフォルクスワーゲンのバンも持っている。

家の中も骨董だらけ。居間には日本の茶箪笥や掛け軸、竹籠などが置いてあるが、これは奥さんの趣味。家中に古い時計、クラリネットやサックスといった古楽器、自動車の部品、古本なんかがぎっしり。これはアランの趣味。 玄関横の門灯は本当のガス灯がちらちら点いている。庭のあちこちには、日本の灯籠、古い梯子など。統一もへったくれもないが、とにかく古いものだらけの家。

アランが、「もうひとつすごいものを見せてやる」と取り出したのは、自動車の木製ハンドル。もちろんジャガーのもの。「これを手に入れるのは苦労したんだ。アメリカのマニアから譲ってもらったんだけど、本当の1964年型の純正だぞ。見てご覧、木のハンドルに塗ってあるニスがつや消しだろ。これが正真正銘のオリジナル塗装なんだ。普通ジャガーのオーナーは、ハンドルのニスが禿げてくると、艶のあるニスを塗る。きれいだからね。でも、これは間違い。つや消しのニスじゃないとオリジナルじゃないんだよ。これは大発見だ。下手したらスミソニアン博物館ものだ。うははは。」

呆れた僕は、「あんた、本当の気違いだな」と言うと、アランは嬉しそうに、「そうなんだよ、そうなんだよ、うひひひ」ともっと喜ぶ。

僕は気違いじゃないから、古くても、錆びている自転車は嫌だ。きれいにして乗りたい。部品も古いのはかっこいいけど、オリジナルでなくても全然構わない。

緑の自転車.jpg
これは緑化された自転車

でも、アランに刺激されたので、家に帰ると、かなり精魂こめて自転車の整備をした。自転車を完全にバラしてみて思ったのは、パーツ自体はそれほど多くないから、作業は大変じゃない。ただ面倒なのは、真っ黒に汚れた油だらけの部品、特にチェーンに触るのが嫌ということがあるかもしれない。でも、これには使い捨てのシリコン手袋をはめて対処した。汚いチェーンをきれいにするには、お湯をかけたり、灯油に一晩つけておいたりする。他の部品も灯油で磨けば、大概はきれいになる。

それでも、汚い部品やチェーンを磨きながら灯油の匂いをかいでいると、中学生、高校生の頃を思い出す。夏休みや春休み、自転車旅行に行く前に、こうやって自転車を整備したものだ。手先を真っ黒にしながら、心はわくわく。そんな気持を思い出したのは、ずいぶん久し振りだ。

テクニカルなことになるが、長年この自転車の補修が面倒だったもうひとつの理由は、タイヤサイズの問題である。僕の自転車は、650Bの40という特殊なサイズで、このタイヤはオーストラリアではほとんど売ってない。(日本でも、そこらの店にはない。)大概の人は、大人用自転車には26インチか27インチしかないと思っているかもしれないが、これは大間違い。700ミリ、650ミリという径もあり、これらは26インチと27インチと微妙に径が違う。さらに、その中にも、更にこまかい径や幅のバラエティがある。サイズが合わないタイヤは車輪にぴったりはまらないから困る。

今回は、インターネットでそのタイヤを探して海外に発注した。イギリスの店に注文したら、ドイツから送られてきた。届いたのを見ると、アメリカのメーカーだが,製造は中国であった。このタイヤは、地球を一周半してきたわけだ。いったいどうなってんだろう!

さらに、今回のレストアで大問題はフレームの塗装だった。フレームは、傷だらけで目もあてられない状態。もと自転車屋のトニーに相談すると、「いいじゃないの、このままで。古くて傷だらけなのも味だよ、味!」と人ごとだと思っていい加減なことを言う。確かに、少しくらい傷があるのは「味」かもしれないが、 傷だらけでぼろぼろなのは「味」をすっかり通り越している。でも、フレームの塗り直しは目の玉が飛び出るほど高価。オーストラリアだと5万円、日本でも2万円はかかる。新しいフレームが買えちゃう値段だ!

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塗装中のフレーム

そこで、思い切って自分で塗り直すことにした。自転車フレームを塗り直すのは、普通はやらない方がいい。上手に塗るのが難しいのと、焼き付け塗装じゃないから、またすぐ傷だらけになるからだ。でも、これもコロンブスの卵。傷だらけになったらまた塗り直せばいい。

そこで、塗料を買いに自動車専門の塗料屋に行った。「自転車のフレームを塗りたいんだけど」と、相談すると、塗料屋が「フレームを持っておいでよ。その色にスプレー缶を調合してあげるから」だって。さすがプロは違う。待つこと一日、オリジナルとほぼ全く同じメタリックレッドのスプレー缶を作ってくれた。うれしいなあ。

古い塗装を落としたり、2日くらいかけてフレームを塗りあげる。我ながら、「ムムム!」と唸りたくなる程きれいに塗れた。

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我が家の古びたツリーハウス。アーティスト西川しょう子さんと、文庫の子ども達がきれいに塗り直してくれました。

後は、ブレーキやギアのケーブルやなんかの消耗部品。ここまでくれば楽勝。インターネット時代だから、普通の部品ならどこでも郵送で買える。最後に、すり減って虫食い状態になったクランクのシャフトも替えることにした。寸法を測ると、73ミリという非常にレアなサイズで(普通は68ミリ)、一瞬青ざめた。こんなの今どきあるの? でも、シドニーの自転車屋にちゃんとあった。

でも、部品を探しながらインターネットで見ていると、古い自転車をレストアして乗るのは、けっこう一般的な趣味として広まっていることが分かる。一種の懐古主義だ。メルボルンにもその筋の専門店が2、3軒あることを知る。そのうちの一軒は、「MOTTAINAI Bicycle」と言う名前。 http://mottainaicycles.com/ 

もちろん、日本語の「もったいない」から命名したらしい。街に出たついでにのぞいてみたら、倉庫みたいな場所で、ヒッピー風ひげ面男が三人ほど、古い自転車を組み直していた。 店にはあること、あること、懐かしいオールドバイクがたくさん 。デローザ、ビアンキ、エディメルクス、プジョー、ラーレーなどに混じって、丸石、ミヤタ、フジといった日本車もある。懐かしくて涙が出そう!

インターネットを見てると、日本にも気違いがたくさんいることが分かる。中でも、古い自転車を徹底的に整備して磨き上げるのが趣味のおじさんたちにもつける薬はない。アランみたいな錆びさび派?とは逆で、こちらはピカピカ派だ。そこまでピカピカに磨いてどうすんの?と思うくらいに、ピカピカに磨く。確かに、昔の60年代から80年代くらまでのロードレーサーやランドナーといった自転車はかっこいいから磨きたくなるだろうけど、ここまできれいにしたら、外で乗れないじゃないの?

繰り返すようだが、僕はそこまで気違いじゃないから、古い自転車をきれいに整備して、もう一度走れるようになればハッピー。

三月中旬、ついにダイヤモンド号が完成。さっそく走りに出る。家を出て、モンバルク村、エメラルド村、メンジーズクリーク村と三角に走って40キロ。田舎道、未舗装道路も多いから、きれいだったダイヤモンド号は、すぐに埃だらけ。でも、久しぶりに走ると気持がいい。ところが、54歳の僕には、山坂が意外にきついのも新たな発見。昔はこのギアで奥多摩、秩父、丹沢、日光いろは坂、信州乙女峠なんかを荷物いっぱい積んでがんがん走ったというのに、今はちょっと坂がきついと、一番低いギアで、時速八キロのろのろ走行。

ようし、これからはトレーニングして、あちこち走るよ。

機関車.jpg
近所の森の中を走る100年前の蒸気機関車。これもぴかぴか。
posted by てったくん at 12:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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