2015年09月10日

  ジャズギターにはまっている

2015年9月10日

今、ジャズギターの練習にはまっている。ギターだけでなく、練習用の小さなアンプも買ってしまったし、もう後には引けない。

もちろん薪割りもしなくてはならないし、仕事もしなくてはならないし、ご飯も作らなくてはならないし、夜がくれば寝なくてはならないけど、心の中はギターのことや、ジャズのコードや音階でいっぱいだ。寝ていても、「えーと、フリジアン・スケールは、ラシドレミファソラで、シがフラット」などと考えているくらいだ。

本当は、先生についてちゃんと教われば良いのだが、僕にあまりにも知識がなくて先生にもあきれられるだろうから、基礎的なことは覚えてからそのうちレッスンに挑もうという計画だ。(そうしないとお金も無駄だし)。

それにしても、僕が高校時代にバンドをやっていた頃と、いろいろなことがうんと違う。僕がもっていたギターのグレコというブランドはもうないが、70年代に作られたグレコギターがネットで「オールド」として、高値で売り買いされているのに驚く。新しいブランドもたくさんあるし、マニアックな手作りギターなどもたくさん出て来ている。ギブソンのギターは相変わらず高値だが、50万、60万のギターなんていったい誰が買うんだろう?(僕は、最近Eastmanという中国製のフルアコを買ったが、これはなかなか評判がよく、アメリカのプロのジャズギタリストもたくさん使っている。)

まあ、それから、ウエブサイトにはいろいろ便利な音楽サイトがあって、ジャズの理論やギターの弾き方も丁寧に教えてくれる。僕も幸い、良い自習用のジャズギターのウエブサイトに出会って、重宝している。これは神戸のギター学校のサイトなのだが、とても親切で分かりやすく、それでいて回り道してでも覚えてなくてはいけないことなんかも、しっかりと教えてくれる。無料で申し訳ないくらい。

ジャズ理論の基本は、コードとスケールと、それらの循環システムと、リズムからなっていると言ってもいい。もちろん、そんなことは昔から頭では分かっていた。僕は、高校時代は、ロックとフュージョン系のバンドを生意気にもやっていたから、理論は別としても、けっこう難しい曲をまあまあ弾いていた。ただ、練習と言えば、カセットプレーヤーが壊れるまで、レコードが傷だらけになるまで何度も聞いての耳コピーのみ。しかし、53歳の今は、そんなに時間も割けないし、少しは知的に効率的に学びたいと思う。

だから今さらながらジャズの理論をかじっている訳だが、恥ずかしいが、コード名の横に付いている7とか9とかの数字とか、さらにその横のフラットやシャープの記号とかの意味をあまり分かっていなかったことを知って愕然としている。ジャズのコードも、たくさん種類のある音階の各音を起点とし、三度ずつ上の音を合計4音重ねたものであることなんかも知らなかった。その二番目と五番目のコードを繰り返して演奏することを、いわゆる「ツー・ファイブ」と言って、その間にギターやピアノが即興演奏するなんて決まりもよく分かってなかった。(いったい、30年もジャズを聴いてきて何だったんだろう?)

というわけで、毎日が発見で、新しいことを学んで喜んでいる。(ただ、あまりに低いレベルのことなので、女房や子どもに自慢したりはできない。うちの子どもは二人ともチェロを弾くし、女房もまあまあのピアノを弾く )。

便利と言えば、インターネットでYoutubeを見れば、どんなスタンダードの曲でも、どこかの誰かが弾き方を教えてくれる時代だ。ジム・ホールでもジョー・パスでもパット・メセニーでもジョン・スコフィールドでも渡辺香津美でも、たいがいの音楽家の映像がある。だから、 何度も穴があくほど見れば、演奏のコツが少し分かる。昔、高校生の頃、コンサートに行くときポケットに録音できるウォークマンを忍ばせて行き、演奏を盗み録りしたりした。時には、レコードになっていない新曲が録音できたりして、まるで鬼の首でもとったような気分だった。もちろん、それを耳コピーして練習したものだ。

でも、今はそんなことまでしなくても、世界中の音楽が、有名ミュージシャンから、果ては世界の果ての街角で演奏しているストリートミュージシャンの演奏までパソコンで見ることができる。そうして知った新しい曲を、書斎で、すぐにその場で 練習し、パソコンに録音して、ガレージバンドなどの音楽ソフトで加工したりすることもできる。(ガレバンはまだあまり使ってないけど、便利そう。これに、はまったらそれこそ仕事どころではないだろう。)

関係ないが、ジャズを齧るようになって読書のレパートリーも増えた。音楽、ジャズ、ロック、楽器ということについて、この頃は以前に増して興味が湧いている。

昔から持っているジャズ関係の本も読み直した。秋吉敏子の『ジャズと生きる』、相倉久人『現代ジャズの視点』などだ。後者は60年代の中頃に書かれたすごく古い本だが、モダンジャズから、新しくコールマンやコルトレーン、マイルズといった新しいミュージシャンがクールジャズやモード奏法などの 手法を編み出した時代のことが書かれていて面白い。ジャズは「感情を表現する音楽だ」などと、面白いことが書いてある。秋吉敏子は渡辺貞男の大先輩だが、50年代の日本の音楽業界が嫌で日本を飛び出し、米国で大成功したジャズピアニストで、この人の人生遍歴もなかなかすごい。

ジャズの歴史は、アメリカや関連世界の政治、文化、ポピュラーカルチャー、芸術と関係があり、シンクロしていることがよくわかる。またジャズの歴史は、構造主義とか、ポストコロニアリズムとか、脱構築とか、クリティカルセオリーとか、環境批評とか、そういう人文系学問の流れともすごくどこかでつながっていて、いよいよ興味はつきない。僕がいま齧っているようなジャズの基本的な理論構造などは、まるで構造主義時代 の記述言語学がやっていた事とそっくりである。音階というのはSVCのような文法構造であり、コード循環はや音節の繰り返しはシンタックスで、7とか9とかの数字で表される度数は、その単語(音)の文法的な役割や品詞を表す指標である。

だが、そうした基本構造を突き崩しているのが60年代後半からのフリージャズやモード奏法なんかであり、今のジャズなんかは、そうした形式はまず脱構築され、その上国境や人種を越え、まったく新しい文化的、政治的なコンテキストで演奏され、ジャズは黒人の音楽なんて固定概念は遥か遠いことになってしまった。そうした意味で、僕のような日系人が、オーストラリアで、日本の例えば「ちびまるこちゃん」のテーマ曲を、アメリカに根ざしたジャズの音階やコードでアレンジしなおし、それを中国製のギターで弾いたとしたら それは一体何なんだろう?(なんだっていいじゃないか!)

さて、これも手元にあって長らく「積んどく」の本だったのだが、David Byrneという、トーキングヘッズというロックバンドのリーダーが書いたHow Music Worksという本も読みふけっている。主にロックについての本だが、ポピュラー音楽の歴史といった内容で、大学のテキストになるくらい中身が濃厚だ。Byrneは非常に現代的で分析的な音楽家だから、彼の本を読むと、現代のポピュラー音楽が、どれほど巧妙に細工され、上手にマーケットされた「商品」であるかがわかる。聞き手は(すなわち消費者)、自分が、ある曲や音楽家を「発見した」ように思ってCDを買ったり曲をダウンロードしたりするが、それは巧妙に張られた音楽マーケティングの網に引っかかっただけなのだ。そういうことが、この本で読むとよく分かる。また音楽家という人種が、どれほど多様であり、音楽家として生きるための方策が、これまた星の数ほどあることも分かる。音楽というのは、テレビやラジオで放送され、 CDやインターネットからダウンロードできるメジャーレーベルだけのものでないと言うことも。

そのByrneには、Bicycle Diariesという自転車についての随筆もあって驚かされる。自転車好きのByrneはコンサートで世界を回る際、必ず自転車を持って行くのだが、その自転車から見えたブラジルやフィリピンなどの各地の文化や音楽のことを語っているのがこの本である。これを読むと、音楽家はこういうことを考えているのか、と驚きもし納得もする。実を言うと僕は、Talking Headsの音楽はあまり好きではないのだが、この人の書く文章は好きである。

これもロックだが、去年読んだNeil Youngの自伝も面白かった。Neilは、音楽家以外にも、身障者の為の学校(自分の息子のために作った)を運営したり、(「鉄ちゃん」だから)鉄道模型の会社を買っちゃったり、アメリカの往年の名車を電気自動車に改造する事業を展開したり、アップルコンピュータを向こうに、昔の真空管アンプとレコードの音をデジタル機器で再生する装置の開発などもやっている。ニールヤングは、言ってみればベンチャー起業家と発明家みたいなところがある。音楽が嫌になると、一年くらいはギターには触りもせず、こういう「趣味」に生きるのだそうだ。言うまでもなく、彼の音楽は出来不出来もあるが、ロックとしては超一流だ。ちなみに、ニールヤングの文章は、非常に下手である。多分自分で書いたのではなくて、編集者が聞き書きしたものに手を入れた程度であろう。こういう所も、人間臭くて面白い。

同様に、エリック・クラプトンの自伝も面白かった。(この本は、娘のボーイフレンドのシャノンに借りた。シャノンはクラプトンに心酔するロッカーなのであるが、実はシャノンのお父さんは、セミプロのロックミュージシャンなのだ。これについては、またそのうち書くこともあるだろうが、今は娘がボーイフレンドのことなど書くと怒るので、これ以上は書けない。)

そう言う僕は、クラプトンのギターは、それほど好きと言う感じじゃなかったし、今でもmy favouriteではない。が、それは別として、クラプトン自伝は面白かった。その極みは、私生児である彼が、自分の母方のおばあさんを、実の母であると信じて育った生立ちの悲劇にあるかもしれない。それから、ドラッグとアルコール中毒から立ち直った経過もすごかった(アル中で酒が止められない人は、クラプトン自伝を読むべし。)その後は、息子が高層マンションから墜落死するという最悪の悲劇に見舞われるのだが、それをTears in Heavenという曲にして歌い、それが大ヒットしたという出来事も尋常ではないだろう。有名なジョージ・ハリスンとの友情(?)のいきさつもまあまあ面白かった。クラプトンが、ジョージの奥さんのパティに恋いこがれ、彼女をモデルにレイラという有名な曲を書いたことはよく知られている。そしてついに、このパティをジョージから譲り受けて(?)無事に結婚したのだが、それまでの思い込みが強すぎたのか、案外早く別れちゃっている。クラプトンは、「まあ、人生なんてそんなもんだ。そんなことで立ち止まるより、先に歩こうぜ」ってな感じでやっている。

クラプトン自伝を読むと、どんな大スターでも人間だし、努力が大切なんだ、という基本的なことが分かる 。(フェラーリで娘に運転の練習をさせているのなんか見ても尊敬する気にはならないが。)

音楽自体とはあまり関係ないが、こういう尋常ではない才能をもったミュージシャンが がどうやって生きたか、というのは小説並みに面白い。

さて、そんなだから、このごろ図書館へ行くと、ジャズの歴史、楽器の図鑑 、ギターの弾き方、ミュージシャンの自伝、音楽評論、楽譜などを片っ端から借りてきている。ついこの間亡くなったアメリカの心理学者で、作家のオリバー・サックスが書いた『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』は借りてきてまだ読んでないが、どうして人間が音楽を発明してこれを愛好しているかという内容なので、読むのがとても楽しみだ。

ミュージシャンのウエブサイトなどにも、けっこうお宝な文章がある。僕が現在もっとも敬愛するジャズギタリストはパット・メセニーだが、彼のウエブサイトには、彼の書いた文章や対談なんかもたくさん載っていて興味深い。ジャズミュージシャンはけっこうインテリだから、文学や芸術などにも詳しくて、それと音楽が交錯するところの話なんかもしてくれて楽しい。

でも、メセニーの文章で一番おもしろかったのは、彼がミズーリ州にある母校(高校)で行った講演録だった。彼はジャズミュージシャンとしては、20回もグラミー賞を受賞して、前人未到の境地の人なのだが、母校でのスピーチは、生立ちの中の音楽の話なので親近感がもてた。彼は、キャンザスシティーの近くの田舎育ちで、お父さんはガソリンスタンドをやっていた。でも、そのお父さんとお兄さんが、けっこうすごいトランぺッターで、父親と兄貴があまりうまいからパット自身はトランぺッターとしては早い時期に挫折している。それでも、高校時代はブラスバンドをやっている。それで、ビートルズがアメリカに上陸し、みんながロックに狂い始めた時、自分はマイルズデイビスを聞いてジャズに走ったことなんかも話していた。マイアミ大学に入ると、19歳で音楽講師になり、さらにボストンのバークリー音楽大学に奨学金をもらって、ゲーリーバートンの助手となる。そこからは、もう流星のごとくジャズ界のスタートなった。僕は、16歳のとき、パットが21歳で出したソロアルバム「思い出のサンロレンゾ」を聞き、正直ぶっ飛んで、3日くらい興奮して眠れなかった。今でも、このアルバムはmy favouriteだ。
(英語だけど、パットのスピーチは以下に。)
http://www.patmetheny.com/writings/full_display.cfm?id=15

それにしても、音楽はやっぱり聞くのが一番だ。Youtubeには、面白いジャズの演奏がたくさんあるけど、最近見たのですごく良かったのが、
Charlie Apicella and Iron City。特にI hear a symphonyという曲が最高。これは、昔シュープリームズが歌った曲のジャズ版カバー。
https://www.youtube.com/watch?v=-X3ZRYpcLRw

このビデオでは、Apicella が口あけて、歌いながら弾くところが、楽しくて仕方ないって感じ。すごくスイングしている。ギターソロは、ウエスモンゴメリーみたいな分かりやすいサウンドだけど、技もあるし、フレーズが歌っている。バックのハモンドオルガンのおっさんも、まるで60年代のままの感じで渋い。加えて、シンバルがやたら騒がしいドラムも賑やか。あとこの バンドで最高にかっこいいのが、真ん中でコンガを叩いているおばちゃんだ。おばちゃんがコンガを叩いているのは初めて見た。髪型も高校の家庭科の先生みたいだけど、ミスマッチなのが最高。でも、有名なパーカッショニストらしい。

今すぐニューヨークに行って、こういうコンサートを聴きたいなあ。でも、メルボルンの近くでも10月の終わりにワンガラッタ・ジャズ・フェスティバルというのがあるから、ぜひ行ってみたいと思っているのだ。
posted by てったくん at 09:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
面白かったよぉーーーーー(~▽~@)♪♪♪

はまってますね♪ヾ(●´∀`●)ノ
Posted by みっきい♪ at 2015年11月28日 00:02
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