2015年02月02日

バーベキューと父親の権威

2015年2月1日

公園での金曜日夕方のバーベキューは、夏時間の間は毎週行われる。主に子どもたちの行っている学校の、ベルグレーブ界隈に暮らす家族が集まる。もう15年程続いているだろうか。多いと10家族くらい、少なくても2、3家族はやってくる。

先週に久しぶりに行ったら、いつものメンバーがたくさんきていた。お父さんたちは、ビール片手に肉を焼き、お母さんたちはピクニックのマットを敷いて、その上で井戸端会議。子どもたちは、公園中を走り回っている。

父親たちの焼きたてのソーセージを食べながらの話題と言えば、夏休みはどうだったの、息子と釣りに行って50センチもあるタイを釣ったの、サッカーのアジアカップでオーストラリアが勝ったとか日本が負けたとか、まあそんなところ。

久しぶりに会ったグレン(仮名)という父親は映像作家なのだが、ティーンエージの娘が拒食症で大変だと言う。「やせ細って死ぬんじゃないかと思ったよ。とにかく今は病院の特別プログラムに入れて、看護師監視の元にリハビリしているけど、今後も難題が多くて、困りきっているよ。とにかくカロリーのあるものは何も食べてくれないんだ」と大弱り。どうしてそんなことになったのか分からないが、肥満が多いオーストラリアでは、若い女性の過食/拒食は確かに大問題だ。

「そんなで、うちもいろいろ大変なんだが、こんなことで落ちこんでいちゃいけないと思ったし、息子(14才)の方とも父子の絆を固めなくちゃいけないからね。それで、息子とキャンプに行っていろいろ話してて、環境保護の話題になったわけ。そしたら、うちの、あのやわな息子がだよ、『父ちゃん、田舎じゃ野良猫や野良ブタや野良ウサギなんかの害獣がいっぱいいて、農家が苦労しているらしい。だから、いっちょう俺と父ちゃんで、憂さ晴らしも兼ねてライフルで、そいつらをばんばん撃っちゃおう 』とか言うわけよ。うちの優男の息子がだよ。あいつがそんな気になるのも珍しいなと思ってさ。でも考えてみたら、それもいい教育になるかなって、俺もまじに考えているわけさ」

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アジアカップ「日本対ヨルダン戦」会場

そしたら、クリントイーストウッドを崩したような顔つきのイアンという父親が「そいつは面白え! うちの息子も、スケボーばっかりやっててからっきし性根がダメだから、是非やらせたい。俺も乗ったぞ」と張り切って、ビールをグビリと飲んだ。

「だが、人家の近くじゃ危ないし、どっか誰かの牧場みたいな広い敷地でライフルがばんばん撃てる場所がないかな?」とグレン。

すると、黙って紅茶を飲んでいたレンガ職人のビルが言う。(ビルは、筋肉隆々の強そうな親父なのだが、酒は一滴も飲めない)。「おれは毎日ジェンブルック村の向こうの山に仕事で行っているが、あの辺りには野生の鹿がいっぱいいるぞ。あれは害獣だから撃ってもいいはずだ。それに、あの辺りは山だから人もいない。鉄砲なんていくらでも撃てるぞ。ただ、鹿はすばしっこいから、人が来るとすぐ逃げちゃうけどな。」

「何、鹿がいるってか? 鹿とは最高だ。肉がめちゃうまい。鹿を撃って牧場の真ん中でバラバラに切り刻んで、その場で焼いて食っちゃおうぜ。ティーンエージャーの息子たちは、ぶるっちゃうだろうけど、最高の教育だよ。サステナビリティーとか、永続的社会とかいってもさあ、自分たちが食っている肉がどこからきてんのか、ここらで一発教えてやんなきゃ、示しがつかねえよ。それに俺たち父親の権威を回復するには最高の機会じゃないの? ねえ、どう、今度の週末みんなで鹿撃ち行かない?」と、グレンが嬉しそうに言う。かなり酔っぱらっているようだ。

とまあ、バーベキューでのお父さんたちは、こんな風に酔って話が大きくなっていくのが常だが、あながち全くのデタラメを言っているのではなく、この中の一人か二人は本気である。ビルもイアンも、ちゃんと自宅に狩猟用のライフルを持っているし。僕は、銃はあまり撃ったことがないので、遠慮しておくことにして、黙って聞いていた。(でも、僕だってアメリカの大学に留学した時は、ライフル射撃の授業を履修して単位を取りました。22口径の小さなライフルだったけど。)

僕の息子は12歳だから、鉄砲を撃つには早いかもしれない。でも、すでに実は銃オタクで、輪ゴム鉄砲を作ってばかりいる。輪ゴムだから危なくはないけど、見た目は本物の猟銃のようなごつい奴を作る。だから物騒だ。僕は、「作っても良いけど、絶対外に持ち歩かないこと。家からは一歩も出してはいけない」と釘を刺している。どうして、うちの息子がそんなに銃好きなのか分からないけど、好きで仕方がないみたいだ。僕も12歳の頃は、銀玉鉄砲はもとより、癇癪玉とか爆竹とかで、親の目を盗んで爆発遊びをしていたけど。でも、もうそういう時代じゃないし、オーストラリではそういうおもちゃは御法度だから、少しでも、僕はそこから息子の関心をそらそうと努力している。今も、そのために本物のモーターボートを父子で作っているのだけど、それでもやっぱり息子は銃が好き。

じゃあ、銃はだめだからと言って、危ないこと全般から男の子たちを遠ざけて家に閉じこめて、勉強とゲームだけさせておけば良いか?さすがに僕も、そんなことは全然思わない。一度くらいは、猟銃で鹿を撃ち、バラバラに解体して内蔵を処理し、焚き火で焼いて食べる、そんなことをしてもいいじゃないかと思う。そもそも、うちの息子も僕も釣りがだい好きで、2週間に一度は行くし、今までに何百匹も釣り上げ、それをかっさばいて食べている。

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息子が釣り上げた立派なシマアジ

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父親の私にさばかれるシマアジ

だいたい、釣りと猟のどこが違うんだ?本質的には何も違わない。ただ、銃では人が殺せるけど、釣り竿では殺せないだけだ。多分ね。(しかし、 動物を銃で撃って殺して、それをナイフで解体するのはちょっと怖いなあ。ニワトリくらいならできそうかな? いや、やっぱり可愛そうだな。)

とにかく、オーストラリアのバーベキューでは、でっかいステーキや、子どもの腕程もあるソーセージを焼いて食べながら、それらの肉が一体どこから来ているのか、というような話題で父親たちは盛り上がるのだ。オーストラリアというのは、そういう場所だし、そういう場所であり続けるだろう。そういう場所で子育て、特に男の子を育てているのは、案外幸運なことかもしれない。

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バーベキューが息子は大好き

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タスマニアデビルは、ニワトリを食べるのが好き(みたい)

一方、お母さんたちと言えば、バーベキューに来てもこの頃はベジタリアン が増え、日本人のお母さん(うちの女房)の作ってきたヒジキの煮物やチラシ寿司に舌鼓をうち、流行しつつある「エダマメ」という食品の食べ方を議論したり、拒食や過食の問題について意見を交換したりしているのである。そんなお母さんたち自身は、決して銃を抱えて鹿を撃ちにいったりはしない。

ところが、オーストラリアのお父さんたちは、菜食主義に傾きつつあるお母さんたちに、全く頭が上がらないのだ。これは一体どういうことなんだろう?

社会の構造というのは、こういう危ないバランスの上に乗っかっているものなのかもしれないですね。

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タマちゃんとネズミ















posted by てったくん at 20:05| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
しまあじ∈∈∈∈∈¬¬¬¬¬¬¬ヨダレ∋∋∋∋∋∋∋∋∋∋
Posted by みっきい♪ at 2015年02月04日 21:36
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