2014年07月11日

30万キロの奇跡

2014年7月9日

冬の釣り行き

冬である。息子リンゴロウの学校も冬休み。メルボルンの7月は真冬で、雨が時折は激しく降り、カヤックに乗って海に出たくとも、風速30メートルの風が吹き荒れていたりするので、なかなかそれも叶わない。天気は変わりやすく、晴れていたと思えば雨が降り、土砂降り と思ったら、虹が出てまた晴れたりする。気分的には雨が降っている時の方が多い気がする。

そんなうっとうしい気分を振り払う為、なかなか休みがないリンゴロウのサッカークラブの練習の合間を縫い、男だけで2泊3日の釣り旅行に出た。行く先はメルボルンの東150キロ、ギップスランド南部ポートウェルシュプールという漁港。ここへは僕が2ヶ月程前にシーカヤックの合宿で来て、ここなら魚が釣れそうだと、睨んだ場所である。

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ギップスランドの平野

2ヶ月前のシーカヤックの合宿とは、ビクトリア・シーカヤック・クラブの親睦合宿で、スネークアイランドという島に漕いで渡り、そこからウイルソンズプロム国立公園までさらに海峡を漕ぐという趣向だった。僕は、まだ新参者なので、島渡りなど大丈夫だろうかと思ったが、クラブの会長さんが「大丈夫、ちっとも心配なし。初心者歓迎!」と太鼓判を押したので、のこのこ出かけて行った。ところがポートウェルシュプール港を出た日は、風速15ノット(28キロメートル)の向かい風、1、5メートルの波とうねりに揉まれ、まるでジェットコースターに乗っているように大波を下ったり、登ったり。自分がどちらを向いているのかも分からず、先輩に「こっちだ、こっちだ」と言われて必死に漕ぐのみだった。

スネークアイランド.JPG
スネークアイランドの合宿

合宿2日目は、 スネークアイランドから海峡を渡ってプロム国立公園の東海岸を漕いだが、波打ち際でちょっと気を抜いたら横波を食らい、 冷たい水に頭からどぼんと沈した。おかげで 水温16度の海で生まれて初めて泳いだ。泳いでいるうちはアドレナリンが出ているせいか寒くないが、陸に上がってからの方が寒くてガタガタ震えた。

今回は、そのポートウェルシュプールに息子と2人でのんびり釣り旅行だ。しかし、着いた日はやはり強風と低温で、ちっとも釣れず。小振りのフラットヘッド(和名はコチ)が少しかかるだけ。2日間でどうにか釣れたと言えるのは、27センチと30センチのコチが二匹とカニ一匹。あまり芳しくない釣行だった。

小コチ.JPG
小さなコチ

しかし、冬の澄んだ空気は美しく、冬雨に閉じ込められて溜まった鬱積はギップスランドの空っ風といっしょにどこかへ飛んでいった。やっぱり広い所に出て、のんびりするに限る。海風はとても爽やか、肺の底の底まですっきりする。


遠浅の海.JPG
遠浅の海岸は車で走れる


30万キロの奇跡

ギップスランドの緑の大地を突っ走ったこの冬の旅行中に、僕の車トヨタ・カムリワゴン(1994年型)がついに走行距離30万キロを突破した。 オーストラリアでは40万キロくらい走る車が決して珍しくないが、僕が一台の車にこれだけ長く乗ったのは初めてだ。2000年に(中古、7万キロ)買ったから、もう15年は乗っている。今11歳のリンゴロウが生まれて時、病院からうちに連れて帰るときもこの車だった。

「パパ、 この車良いよね。でっかくて、何でものせられて」と、リンゴロウは今も言うが、彼にはこの車はゆりかごの様なものだろう。もちろん、金にあかせず最新型のSUVや4WDに替えたらもっと良いだろうけど、この古いワゴンでとりあえず用は足りている。燃費もまあまあ(リッター10から12キロ)、故障知らずだ。また、広い室内、汚れても構わないくたびれたボディには、釣り道具、キャンプ道具、カヤックなど、塩水や泥で汚れたものを満載してもちっとも気にならない。とにかくこれだけ使えば、カーボンフットプリントも最小限にとどめたことになるのでは?

もちろん、乗っていた車が30万キロ走った ことにはあまり深い意味はないだろう。ただ単に、僕がよほど物持ちが良いのか、ケチなのか、たまたま整備を怠らなかったせいか、運が良かったか、この車が「当たり」だったのか、あるいは僕がよほど物事に固執するたちなのか、まあ、そんなことかも知れない。

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しかし、僕はこの車でいろいろな用を足したし、何度も家族と旅行もしたし、息子ともどれだけ釣りに行ったか分からない。だから、 自動車は、所詮ただの「物」かもしれないが、30万キロもの長い距離と時間をつき合ってもらった事を、何かの僥倖(ぎょうこう=おもいがけない幸い)と考える事にした。 そして、今後何かすばらしいことがたくさん起きると考えることにした。

餅つき

そのことを祝うつもりでもないが、7月の文庫では、餅つきをやった(僕は「メルボルンこども文庫」という集まりをもう15年も主催している)。昨年だったか臼と杵を作ったので、ついにそれを使ってみる事にしたのだ。餅つきは準備が大変だからなかなか腰が上がらなかったのだが、近所の日本人の友達に「やりましょうよ!」とそそのかされ、急遽やることになった。

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オジーのパパもぺったらぺったら

7キロの餅米を前夜から水に浸けて、朝から強火で蒸した。昼過ぎには、文庫の子どもたちやら親たちが10家族程集まり、ぺったり、ぺったり餅つきが始まった。あんころ餅、ショウユ餅、キナコ餅、大根おろしのからみ餅などだが、7キロの餅米がきれいになくなった。みんな食べること、食べること。オジーのお父さんたちも、あんころ餅やショウユ餅を「おいしい、おいしい」と、はぐはぐ食べていた。

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餅米は、オーストラリアの我が家の近所で売っているのは、タイと中国産の餅米だが、韓国産の餅米を差し入れてくれたご家族があり、その方が断然粘りがあって美味しかった。きっと韓国の餅米は、日本の餅米に似ているのだろう。

餅つきというのは、お祭りみたいで、人が集まってわいわいやるのが楽しい。特に、冬の寒いときに、湯気の出る餅を食べながらやると、心の中がぽっかり暖まる。

春を待つ気持

リンゴロウの冬休みはまだあと2、3日ある。サッカーの練習もあるし、もう泊まりで出かるほどの余裕はない。 今日も朝からまた雨。そこで、リンゴロウを連れて、ビクトリア・シーカヤッククラブの面々が、手作りカヤックを作っているワークショップを覗きに行くことにした。

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手作りカヤック工房

ミッチャムの教会の裏の作業場がカヤック工房となっていて、クラブのメンバーの有志たちが一週間かけて、昔風のグリーンランド型シーカヤックを作っている。初老の親爺たちがカンナくずだらけになりながら、子どものように喜々としてカヤックを作っていた。僕も、過去にカヌーとカヤックを作った経験があるので、興味津々で見せてもらう。

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skin-on-frameのカヤックの骨組み

今回この人たちが作っているのは、skin-on-frameという形式の、昔のグリーンランドの先住民たちが、動物の皮を木製フレームに張って作ったのと同じ形のものだ。ただ動物の皮の代わりに、新素材の繊維と防水のポリウレタン塗料を塗るところが現代的だが。教えているのは、クラブ会長のボブとその義理の息子ブレンダンだ。ボブは、本業は大学教授/牧師であるが、なんだかカヤックの方が本業ではないかと思われる程のめりこんでいる。

「カヤック作りは、本職はだしですね」と僕がお世辞とも皮肉とも取れることを言うと、サンタクロースのような巨漢のボブは破顔し、
「いやあ、こう寒いと、あまり海にも出れないしね。でも、この間は、強風の中、海に出てローリング練習をやったら、自慢の木製グリーランドパドルを折っちゃってね。ウハハ! このワークショップが終わったら、すぐにもう一本作らなくちゃならんのだよ。ワハハハ!」と、大きなお腹を揺すって笑うのであった。こういう福々とした人といると、心の底が暖かくなってくる気がする。

こうやって、みんな春がくるのを着々と準備しながら待っている。僕も、雨が上がったら海に出るぞ。


愛艇にのって.JPG
ウィルソンズ・プロム国立公園で愛艇に乗る
posted by てったくん at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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