2018年11月29日

「ポテチ死」という死に方はどうなのか?

2018年11月28日

今年は中盤から、どうも体調が思わしくなくなった。ことの起こりは胃だ。晩秋ごろ(オーストラリア、メルボルンの話だから4月ごろ)から胃の具合が悪くなった。加えて、7月くらいから喉の具合もおかしくなった。腫れぼったくて、スッキリしない。医者は、冬場の風邪が治らずに炎症を起こしているのでしょうと言う。8月、今度は仕事で酷暑の日本に行った。すると、季節の逆変と夏の暑さからくるストレスで、体調はもっとひどくなった。ある時、知人と都心で昼飯を食っていたら、喉が干上がって苦しくなった。

その夜ミニ同窓会があって、中学時代の同級生と青山の蕎麦屋で飲んだ。まだ喉はおかしいし、胃も重い(酒なんか飲んでる場合か!) すると口の悪いU君が、「お前、声が変だぞ。俺の親父は喉頭癌で死んだが、ちょうどそんな感じで声が変になって、最後は声が出なくなって死んだ。早く病院にいけ」と言った。気分は最悪だ。

そこで、とにかく医者に行くことにした。だが、僕は、日本に住んでいないから健康保険もない。でも、手遅れになったらことだから、調布駅前の耳鼻咽喉科に行った。医者はすぐに喉にカメラを入れて診てくれた。すると、「喉はちょっと赤くなっていますけど、腫瘍なんかないし、声帯だって綺麗なものです。多分逆流性食道炎です。オーストラリアに帰ったら、喉よりも胃の具合を診てもらってください」という見立てだった。喉の証拠写真もプリントアウトしてくれた。健康保険がないので診察料が九千円もかかったが、病名が分かって気が楽になった。

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新宿のビルの谷間で浮かない顔の僕

日本の酷暑は、8月終わりにだいぶ収まったが、テレビのニュースで「こういう暑かった夏の後、特に老人には、秋口に体調を崩して病気になる人が多い」と言っていた。それを見ながら、そうだなあ、老人は大変だよなあ、と思った。

ところが、老人だけじゃなくて、僕の体調もなかなか回復しないのだった。胃も喉もすっきりしない。メルボルンに帰ると、すぐ医者に診てもらった。やっぱり逆流性食道炎だろうということだった。そこで胃薬を9月いっぱい飲んだ。そしたら胃は軽快した。酒やコーヒーをやめたことも良かったのかもしれない。喉も全快とは言えないが、大分普通に戻った。やれやれ。10月頭、また医者に行った。医者は「今度は、薬なしで1ヶ月様子を見ましょう」と言った。

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その1ヶ月間、僕はカヌーを漕ぐトレーニングを始めた。11月中旬にマレー川カヌーマラソンに、リレーチームのメンバーとして出場する予定だったからだ。これは、5日間で404キロを漕ぐという過酷なレースだ。今年がこのレースの50周年なので、チームメイトの鼻息も荒かった。チームメイトというのは、50代から70代のおじさん、おばさんの8名だ。僕は過去に一回出場しているが、まだまだ新参者の若造だ。その上、僕はまだあまり体調が思わしくなく、トレーニングを始めても、どうも全力が出せない。よほど頑張らなければいけないと肝に命じた。それから数回、近所の湖で練習した。どうにかいけそうかなと、そんな気がしてきた。ところが突然、我がチームは、カヌーリレーを棄権することになってしまったのだ。なぜなら、チームリーダーのチョーさん(本名ブライアン)が、大怪我をしたからだった。

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マレー川、カヌーマラソンで漕ぐ私(前に座っている)

チョーさんは、71歳の元工務店勤務のオヤジだ。年は食っているが、現場で働いていただけあって、体力と気力はある。雰囲気が、ドリフのいかりや長介に似ているので、僕は密かに「チョーさん」と呼んでいる。その怪我は、チョーさんが、ある夕方、家のベランダでビールを飲みながらくつろいでいるときに起きた。彼がポテチ(厚手の硬いやつ)を口いっぱいに頬張って噛み砕いたら、口の中で割れた切っ先が喉の奥につき刺さったそうだ。そして、悪いことに、それが皮膚のすぐ裏側の動脈を切ってしまったと言う。動脈だから、チョーさんの口からは血が噴水のようにほとばしった。横にいた奥さんは、腰を抜かしたが、気を取り直して救急車を呼んだ。その間チョーさんは、ビール瓶を握りしめながらも、オカルト映画のように口から血をドボドボ滴らしている。救急車は数分で到着し、チョーさんはすぐに病院に担ぎ込まれて処置を受けたが、傷を塞ぐまでだいぶ手こずったらしい。出血がすごいので、途中で輸血もしたらしい。これがどこか人里離れた場所だったら、間違いなく出血多量で死んでいただろうという話だ。そんなことで、傷が癒えないうちは、奥地の川でカヌーなんて漕ぐわけにはいかない。協議の結果、リーダーが出られないのなら今年のレースは棄権ということになったと言う次第。

翌日、チョーさんが電話をしてきた。「俺の怪我のせいでレースに出られなくなって申し訳ない。しかし、俺もとんでもないことで死にかけたもんだ。ポテチ死なんて冗談じゃないよ。孫に、おじいちゃんはポテチが喉に刺さって死んだんだよ、なんて言えるか? 俺はもっとかっこいい死に方をするぜ」と、チョーさんは笑っていた。でも、本人は、さぞビックリしたことだろう。

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マレー川にて、チョーさんの勇姿

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マレー川の景色。こういう何もないところをひたすら400キロ漕ぐのである


日本でも、時どき餅を喉に詰まらせて亡くなる人がいるが、ポテチ死する人も、案外あるのかもしれない。そう言えば、昔知っていた人で、朝食のコーンフレークを喉に詰まらせて亡くなった人があった。笑ってはいけない。どんな死に方でも、事故で人が亡くなるのは大変なことなのだ。

そんなことを、友人の、「調布の賢者」ことM城さんに話したら、「でもさあ、不治の病になって延命処置で長く生かされるより、ポテチ死でいいから、ころっと死にたいよなあ」と言った。それもそうだ。点滴チューブをいっぱいつけて意識不明になってでも生きるのなんて嫌だ。家族には、「最後に意識がなくなったら、ポテチを口いっぱいに詰めこむように」と言っておこう。
 そう言えば、今年早々には、元気いっぱいだった中学の同級生の女性が、突然の動脈剥離で亡くなっている。もう一人、僕と同い年の別の女性も、同じように動脈が破れたが運よく九死に一生を得たと、近況メールに書いてきた。動脈が破裂したり、切れたりなんて予測もできない。しかし、人生何があるか分かったもんじゃない。だから、毎日毎日を大切に生きなければいけない。

昨日、また1ヶ月経ったので医者に行った。喉はほとんど良くなっている。ただ、先週花粉症になった時に鼻水が大量にたれ、その時だけは喉が前のようにおかしくなった。それを医者に伝えたら、「じゃあ、今度は鼻炎スプレーを1ヶ月使ってみましょう」ということになった。早速、薬局でスプレーを買って、シュシュっとやった。そしたら、ほんの数分後に効果が現れ、ここ数ヶ月僕を悩ませていた喉の腫れは、空が晴れ渡るように霧散した。今度こそ完治したと言ってもいい。ステロイドの効果なのか、それとも僕が暗示にかかりやすい性格なのかわからないが、効果は劇的だ。正直いって、とても嬉しい!(もっとも、これでまた1ヶ月様子を見るのだが。)

とにかく、今日からは、新しい気持ちで生きよう! 僕は、これから何か新しい目標を見つけて、それに向かって生きるのだ。(かなりのお調子者なんだよなあ、僕は)。 

それにしても、ポテチを食べるときだけは、重々注意しよう。

 
posted by てったくん at 19:03| 日記